The Space for Grief

グリーフの空間

グリーフに自分を解放する

 
 

 

グリーフ(grief 悲嘆)とは、私たちの人生において本質的でかけがえのない要素を喪失することによって作り出されたされた、魂のあり方です。

死別による心の状態を意味することが多いですが、それだけではなく自分の大切な要素、健康であったり、結婚生活や家、生きがいやキャリアであったり、住んでいた場所を失うことによる心の状態も指します。私たち誰もが、生きていてさまざまなグリーフを経験します。

グリーフは、悲しい、苦しいといった感情そのものではありません。また一方で、全ての感情を含みます。それは、怒りや罪の意識であったり、また慈しみの感情であったりします。

グリーフは、愛なのです。

古代イスラム教の神秘守秘者で詩人でもあるルミ(Rumi)は、

グリーフは慈しみの園である。 

と述べています。

また、コリン・ムレイ・パークスは

グリーフの痛みは、ちょうど愛の喜びと同じだけ、私達の人生の大きな部分をしめています。その痛みはたぶん、私たちが愛に与える価値に相当しています。そう、あなたのグリーフはあなたの愛なのです。

と表現しています。

生まれたばかりの赤ちゃんをお母さんが抱きしめるように、心から愛しんでいたその失った人や対象への慈しみが、今はグリーフとなって私たちの生きる道に現れているのです。だから、それは否定したり押し込める感情ではないことを知ってください。

グリーフに自分を解放することが必要です。

それは難しいことかもしれません。けれど、自分のグリーフを無視して、生活を続けるといつかその破綻がやってきます。グリーフにしっかりと対峙してみる時間と空間を創る試みをしてください。一人でゆっくりとできる時間であったり、気持ちを書き出したり、絵にしたり、また、あなたのグリーフを受け止めてくれる人との時間を作ってみましょう。受け止めてくれる人は、慣れ親しんでいる家族や友人かもしれないし、そうではなくて、今まで全然知らなかった人かもしれません。この世の中には、たとえあなたにまだ会ったことがなくても、あなたの苦しみを知り、分かち合おうとする人たちがいるのです。

アラン・ウォルフェルトはこう書き綴っています。

あなたを聴き共感してくれる人は、あなたを内側から理解しようとします。あなたの考えや気持ちをを批判したりしません。彼女は、あなたに問題の解決策を提供することもありません。その代わり、彼女は自分の中にあなたと同じ状況や感情を探し出し、それによってあなたと深く繋がれるように努めます。彼女は、あなたによって教えられることを自分に許して、あなたの前に現れているのです。

グリーフは、私たちの人生を決定的に変化させます。そして私たちが、それを経験する前の自分に戻ることはあり得ません。新しい人生の段階が徐々にひらけてくるからです。グリーフは消し去ったり乗り越えるものではありません。今までの生きてきたその道に新たに入ってきて、それをうまく溶け込ませるようにしてのみ、私たちは新しい人生を紡いでゆくことができるのです。

グリーフは、さまざまな感情や思考、身体の症状で現れてきます。そしてそれは、落ち寄せる波のように時には大きく、また時には穏やかにやってきます。波がひいている時の自分を責めないでください。それはあなたが生きることを続けるうえで必要な穏やかさであって、神さまや宇宙が与えてくれている癒しの時、あなたが故人に対する思いを疎かにしているのではないことを知ってください。その時は、ゆったりと過ごして、今この世界にあるもの、自然や親しい人たち、美しいスピリットと、少しでも幸せな時を共有することを、どうか自分に許してあげてください。

自分をグリーフに解放する時、私たちは今まで気づかなかったスピリチュアリティに気づき、素直に受け止められるようになることがあります。それは、ある人にとっては宗教と深い信仰であり、またある人にとっては宗教ではないスピリチュアルな経験、またある人にとっては自然の中に自分が還ってゆくような経験です。それらは、私たちの魂を深く癒してくれ、この地上で生きている美しさと意味をを教えてくれるでしょう。

そしてその時、あなたはおそらく気づくでしょう。愛は決して途絶えないということを。愛する人が亡くなるということは、その人が物質的な世界からあなたの心に中への引っ越しなのです。同じことが失ったものや場所に対しても言えます。身体や物質を超えて、愛は違う形であなたと繋がり続けます。

どうか、グリーフと向かい合うことを恐れないでください。

そのための時間や空間は、これからの長い旅路で、あなたの人生を新たな充実へともたらす拠点になることを知ってください。

将来いつの日か、あなたの人生がさらに美しく調和に満ち、意味のあるものへとトランスフォームしてゆく、その風景を心に描いてみてください。そして、どうかそれを信じてください。

 

バッハの演奏に合わせて、Griefをモチーフに映像をを作ってみました。