Covid 19 ~ウィレムアレクサンダー国王の国民に向けてのアナウンス
ちょうど1週間前、オランダ・ウィレムアレクサンダー国王が、国民に向けてコロナ感染症covid19に関しての注意とこれからの生活について語られ、国民を鼓舞なさりました。その内容は、とても深い感情と共感をあわらされたもので、聴いていて本当に心にひびきました。
コロナの勢力を、今、私たちは抑えることができない。でも、孤独のウィルスは私たち自身が抑えてゆける・・・
誰一人、自分が取り残されたと思うことのないように、一人一人が自主的に行動をとり助け合いましょう。私たちのつながりの意識がオランダをオランダとして保ち続ける。。。
人との温かい繋がりと、一人一人の心を大切にする、オランダの国民性がとてもよく表れていると思います。
このスピーチが発表された時、オランダで感染が明らかになった人は2000人台でした。1週間過ぎた今、すでに7400人を超えています。私の知人にも感染者が出ています。忘れてはならないことは、オランダは日本の近畿地方くらいしかない小さな国です。
全スピーチを日本語訳してみました。どうしてもうまく日本語に治らないところは意訳になっています。ご了承ください。(なお最初に出てくる、カリブ海諸国とはオランダ王国に属する、スリナムやアルバのことを指していると思われます)
写真は、オランダの新聞 TROUWより。クリックするとスピーチのビデオにリンクします。
3月20日 ハウステンボスの王宮にて
この数週間で私たちの生活は劇的に変化しました。コロナウィルスは全てに影響しました。オランダと、カリブ海地方の王国と、そして全世界に。
亡くなったほとんどの方は、とても重い病気の方やその家族の方です。私たちは、コロナウィルスのために家庭や病院で亡くなったすべての方の身近にいる人たちに、強く共感いたします。
私たちは、この困難の時に、あなたたちを思っています。
ウィルスの拡大を抑制するための法令は、ラディカルで広範囲にわたるものです。私は、あなた方の悲しみを心に受け留めています。愛する人を、お父様やお母様を、もしくはお爺様やお祖母様を、訪れることができないあなたがたの悲しみを。あなた方は、今ただ一つのことがしたい:彼らの手をしっかりと握って、慰めと癒しを与えてあげたい。
人々が、例外的な特別な行動を提供してくれています。もちろんここでは、私たちの医師や看護スタッフのことを意味しています。(彼らの働きを通して)共に生きている社会全体の中から、あなたたちは正しい時に正しいもの享受できるのです。私たちは介護専門家と全ての医療機関を誇りに思います。そして、何千人もの元医療スタッフやボランティアたちも自発的に動いてくれています。素晴らしい。
私たちはまた、環境公共厚生機関(RIVM) 、地方自治厚生局(GGD)と、その他全ての、研究と経験知識によって私たちを指導し、行くべき道を示してくれている専門家と機関を誇りに思うことができるでしょう。彼らは多忙の頂点にいます。大事なことは、私たちは彼らを信頼し続け、全ての指示に従うことです。彼らの着眼点はただ一つの目的に向けられています。つまり、私たち皆で一緒にこの危機を乗り越えてゆくとき、弱っている人々の危機を最小限に抑えられるということです。
私たちはまた、私たちの社会が平静・潤滑に機能してゆくよう維持している人たち、すなわち、物流業、スーパーマーケット、清掃業、ICT、子供達の教育、託児所、公共交通機関、警察や、そのほかの全ての場所で働いている人たちが、私たちにとって欠く事ができないどれだけ大切な人たちであるかを十分に気づきました。
あなたたちはこの困難な時において、私たちが前進できるよう導いてくれています。あなたたちなしでは、困難を切り抜ける道はあり得ないでしょう。沢山感謝します。
私たちの心はまた、自分たちの会社が存続してゆけるよう誠意を持って取り組み働いている人々にも傾いています。輸出業を営んでいる方や個人事業主の方には、この状況は大変ひどい事態を引き起こしています。あなたが長年、たくさんの時間と熱意愛情を込めて築き上げた事業が、行き詰ってしまうのを見るのはひどく耐えられないことです。同じ事がまた、文化セクターに従事する方々にも当てはまります。あなたたちが、せっかく構想した美しい計画が実現されなくなってしまいました。
私は、オランダ中の全ての子どもたちのことを思います。あなたたちが、今どんなふうに感じているかよくわかります。最初は、自由になるのでちょっと嬉しかったかも。でもそんな気持ちもすぐに終わってしまいましたね。学校にゆけない。サッカーにも、バレエのレッスンにもゆけない。誕生パーティは取りやめになってしまう。とてもつらいですね。
そして、ご両親たち。突然、あなたたちの家族みんなが家でいるようになりました。たくさんの家事がのしかかってきました。家の外に出る機会はほとんど全て失われてしまいました。なぜならあなた方が喜びに思えることは、ほぼみんなキャンセルされてしまったのですから。
私たち誰もに、かなりたくさんのことが強いられ要求されているのです。
もし不安であったり、確信が持てないときは、他の人たちにより多くのコンタクトを必要とするでしょう。不安な話はどこかにやってしまいたい、そして、いつも通りの自信に満ちた様子を見せたい。できることなら、そんな不安は一緒に忘れてしまいたい。
現状はとても難しくなってしまっていまいました。私たちは自分をしっかり守ってくれる人たちや、特に、近くにいて話を聞いてくれる人たちに会えないのです。あなたの仕事場、スポーツクラブ、朝のコーヒーを一緒に飲む仲間、音楽活動の集まり、家族での週末の集い、そして教会行事など(全て中止を強いられてしまいました)。
愛する人に会えない事が、誰にとっても状況をさらに酷くしてしまっています。特に体調やすぐれない状態の人や、高齢で体力がない人たちにとっては尚更です。
幸い、私たちにできることはとてもたくさんあります。私たちはみんな、身近なところで誰が配慮を必要としているかわかります。それがまさに私たちが一緒になって取り組まなければならないことなのです。本当にたくさんの人が、それに気づいてくれています。その人たちは、開かれた眼で他者を見つめ、そうして活動が可能な場所でお互いに助け合いを実践しています。
コロナウィルスを私たちは止める事ができない。けれども、孤独のウィルスは、私たちがくい止める事ができるのです。
誰一人、置き去りにされたと感じる事がないように、私たちは一緒に助け合いましょう。
もしも、誰かを訪問する事ができないのなら、幸い私たちはインターネットを通じたコミュニケーション手段、電話や郵便があります。そして、全ての人々が自主的に行動を取らない限り、オランダはオランダで無くなってしまうでしょう。
自分の地域の看護センターのために待機してくれる人。ヘルプライン(相談サービス)に自らボランティアとして応募する人。生命救助活動の仕事を続けなければならない両親の家庭のために、彼らの子供の世話やベビーシッターを申し出る学生たち。コロナは、信じられないほどの行動力と創造性と慈悲の感情を、私たちから解放しました。
その質は、今だけに限らず、もし後に状況がさらに厳しく挑戦的になった時、間違いなく私たちが強く必要とし続けるものです。
だから、公共の生活が麻痺してしまっているにも関わらず、ともに生きるという私たちの心は脈打ち続ける、そのことを、どうかあなたたちは気をかけてください。警告に敏感であること、団結、そして心の暖かさ、この3つをしっかりと抱いている限り、私たちはこの危機がたとえ長期に渡るとしても、ともに乗り越えてゆくことができます。
2020年は、私たち誰もが、一生のうちで記憶し振り返る歳になります。一人一人が、それぞれ独自の経験をし、それぞれ違ったかたちで受け止めながら生きてゆきます。けれども、私は望み期待しています。団結と誇りの気持ちが、この困難の時に私たちを繋げることを。